手仕事の芸術

オートクチュールコースでは着々と様々なドレスが形になってきています。
レースへの刺繍は針さばきが難しくレースの繊維を引っ掛けないように刺していく必要があります。スパンコールやビーズのわずかな角度によって表現される立体的な美観が輝いていきます。
竹ビーズの刺繍も添えられ、スピードがぐっと上がり、一段と美しい仕上がりになりつつあります。

ホワイトドレスは様々なパーツのレースへの刺繍が施され、生き生きとした美しさが煌きます。その迫力に負けないボリュームのパニエは、刺繍に負けないほど多くの時間と手仕事を必要としました。ギャザーを寄せる作業だけでも100メートル以上の長さがあり、チュールは1反以上使用しました。

作品が大きければ大きいほど、その手仕事には、永遠のように感じられる長い道のりがあります。その途中では時には、不安や大変さ苦しみもあります。しかし完成を迎える時、一つの芸術作品が形になったような感動をもたらしてくれます。何よりも作り手が完成時に最もその喜びを感じ、またそれが見る人にも伝わっていくのかもしれません。
1丹46m以上のチュールで形になったパニエ
レース✖️スパンコール・ビーズ・クリスタル etc...

 

内部の見えない部分への配慮という仕事

一点ものドレスで体型がデザインやシルエットに影響するドレスは、ドレーピングのボディラインも修正が必要です。人が着用した状態でドレーピングをするのがベストですが。自分のものを作る場合はそういう訳にもいきません。バイアス状にカットした布を巻きつけ、修正して整えていきました。ドレーピングも進み、3枚のオーガンジーが重なり合うニュアンスのあるデザインは、形になっていくのが楽しみです。

そしてホワイトのドレスは刺繍のメッセージが印象的なシンプルでありながらエッジの効いたドレスです。刺繍の素材感にもこだわりが光ります。モダンでシンプルなシルエットと刺繍の溶け合っていく瞬間も素敵でしょう。裏地のスカート部分のドレーピングも丁寧に進められました。

こうした「内部の見えない部分への配慮」という仕事は、姿を見せませんが必ず全体に滲み出るものになっていきます。


 
裏地を直にドレーピング
仕立て上げ、いよいよ表地のドレーピングに
刺繍のマケット(試し)
スカート部分のドレーピング

 

2分の1のドレス

2分の1サイズの小さなドレスは、その小ささが細かいために難しい部分もあります。しかし細かくピンをうち、細部まで丹念に挑戦されました。初めてのドレーピングとのことですが、美しさへの情熱が感じられます。
ホワイトドレスのドレーピングも、ボディから外し平面状で確認すると、小さいながらも良いラインが確認できました。

数年前には、こうしたオートクチュールの手仕事を遠隔のオンラインでレッスンしていくということは考えられませんでした。しかし今となっては、手元をクローズアップでき、それぞれのペースで進められることで、個人の技術の鍛錬にとって良い機会となっていることを感じさせていただいています。また、オンラインレッスンになってから全体的に受講生の皆さんの課題の質が上がりスピードも増したことにも驚かされています。

クリエイティブへのエネルギーは、距離を超えて呼応していくものだということを教えられ、皆さんの成長を嬉しく思う日々です。ウィルス感染により先行きが見えない社会の片隅でも、こうした皆さんのエネルギッシュな創造は希望であり、この一つ一つの出会いに感謝の想いも込み上げます。
2分の1のドレーピング
平面状のラインの修正前
今週も皆さんのクリエーションが豊かさと幸せに満ちますように。





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